『対岸の彼女』 角田光代(文芸春秋社刊)
2005年12月4日 読書
生まれて初めてのブックレビュー(大げさ〜!)は、
今日図書館から借りて1日で読んでしまった、
直木賞受賞の本作品に。
この作品の内容を簡単にまとめると、
共通点は同じ大学を卒業した同い年という、2人の女性。
でも、一人は独身で小さいながらも会社社長、
もう一人は既婚で子持ち、専業主婦暦数年。
対照的な立場の二人が、友情を築いていく話です。
小川洋子さんについて、
「この作家を今まで知らなかったのが悔しい」
ある知人がそう言った事があります。
同じことを、この作品を読んだ第一の感想として抱きました。
「最近になって知った。しゃべることは、気持ちいいのだ。義母のことも、夫の不要な発言も、口に出せば喜劇性を帯び、すぐに忘れられる。言わずにためこむと、些細なことがとたんに重い意味を持ち、悲劇性と深刻味を帯びる」
人に話せば心が軽くなる。
それは万人が分かっていることだろうと思うけど、
これほど明確に説明してある文章を書ける人。
角田さんの小説を今まで読まなかったことを、
悔しく思った瞬間でした。
「小学生のようないじめをするほど幼稚ではないが、けれど何かむしゃくしゃする、人を見下し順列をつけ優位に立ちたい。そんな気分が、どこにも出口を見つけられないまま鬱屈していっている」
上記の文章や女子高生の心中未遂事件も関わる展開に、
私にはなかなか理解できない、いじめや集団自殺の心理が、
この小説を読んで理解できたような気がしました。
例えば唯川恵さんや山本文緒さん。
ちょっとコピーっぽく言えば
「現代女性の心理をリアルに描く」女性作家は多いですが、
実を言えば私は余り共感できませんでした。
登場人物(特に主人公)の心理には納得できても、
環境やキャラクターに共感できないからだと思います。
でもこの角田光代さんのこの小説には、
登場する人物に自分と重なる部分があって、
とても現実味を感じました。
主人公の一人、女性社長は最後に、大きな裏切りを受けます。
でも、その先に大切なものを得て、さらに前進しようとします。
「ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね」
そう、きっと、それはこんなことを言ってくれる存在…友達。
「ねえ、アオちん、あんな場所でなんにもこわがることなんかないよ。もしアオちんの言うとおり、順番にだれかがハブられていったとしても、その順番がアオちんになったとしても、あたしだけは絶対にアオちんの味方だし、できるかぎり守ってあげる。ね、みんなが無視したって、たったひとりでも話してくれたらなんにもこわいことなんかないでしょ?」
こう言ってくれた人とは離れてしまったけど、
そんな人が居たから、今の自分が居る。
そしてまた目の前に、同じように思える思ってくれる存在が現れた。
お互い、守り守られる存在。
そんな人が身近に居ますか?と聞かれると、
私は「居ます」とは残念ながら答えられません。
でも、自分らしくあるがままに生きることで、
きっと見つけられるのではないかと、そう思いました。
(ISBN:4163235108 単行本 角田 光代 文藝春秋 2004/11/09 ¥1,680)
今日図書館から借りて1日で読んでしまった、
直木賞受賞の本作品に。
この作品の内容を簡単にまとめると、
共通点は同じ大学を卒業した同い年という、2人の女性。
でも、一人は独身で小さいながらも会社社長、
もう一人は既婚で子持ち、専業主婦暦数年。
対照的な立場の二人が、友情を築いていく話です。
小川洋子さんについて、
「この作家を今まで知らなかったのが悔しい」
ある知人がそう言った事があります。
同じことを、この作品を読んだ第一の感想として抱きました。
「最近になって知った。しゃべることは、気持ちいいのだ。義母のことも、夫の不要な発言も、口に出せば喜劇性を帯び、すぐに忘れられる。言わずにためこむと、些細なことがとたんに重い意味を持ち、悲劇性と深刻味を帯びる」
人に話せば心が軽くなる。
それは万人が分かっていることだろうと思うけど、
これほど明確に説明してある文章を書ける人。
角田さんの小説を今まで読まなかったことを、
悔しく思った瞬間でした。
「小学生のようないじめをするほど幼稚ではないが、けれど何かむしゃくしゃする、人を見下し順列をつけ優位に立ちたい。そんな気分が、どこにも出口を見つけられないまま鬱屈していっている」
上記の文章や女子高生の心中未遂事件も関わる展開に、
私にはなかなか理解できない、いじめや集団自殺の心理が、
この小説を読んで理解できたような気がしました。
例えば唯川恵さんや山本文緒さん。
ちょっとコピーっぽく言えば
「現代女性の心理をリアルに描く」女性作家は多いですが、
実を言えば私は余り共感できませんでした。
登場人物(特に主人公)の心理には納得できても、
環境やキャラクターに共感できないからだと思います。
でもこの角田光代さんのこの小説には、
登場する人物に自分と重なる部分があって、
とても現実味を感じました。
主人公の一人、女性社長は最後に、大きな裏切りを受けます。
でも、その先に大切なものを得て、さらに前進しようとします。
「ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね」
そう、きっと、それはこんなことを言ってくれる存在…友達。
「ねえ、アオちん、あんな場所でなんにもこわがることなんかないよ。もしアオちんの言うとおり、順番にだれかがハブられていったとしても、その順番がアオちんになったとしても、あたしだけは絶対にアオちんの味方だし、できるかぎり守ってあげる。ね、みんなが無視したって、たったひとりでも話してくれたらなんにもこわいことなんかないでしょ?」
こう言ってくれた人とは離れてしまったけど、
そんな人が居たから、今の自分が居る。
そしてまた目の前に、同じように思える思ってくれる存在が現れた。
お互い、守り守られる存在。
そんな人が身近に居ますか?と聞かれると、
私は「居ます」とは残念ながら答えられません。
でも、自分らしくあるがままに生きることで、
きっと見つけられるのではないかと、そう思いました。
(ISBN:4163235108 単行本 角田 光代 文藝春秋 2004/11/09 ¥1,680)
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