『宿命』東野圭吾(講談社文庫刊)
2006年1月21日 読書子供の頃偶然に出会った2人の少年。
小学校から高校まで同級生だったが、お互いがお互いを意識しあいながら、どうしても親しくなれなかった。
成長し、刑事と殺人事件の容疑者として、
目に見えない糸に手繰り寄せられるかのように2人は再会する。
そして容疑者の妻となっていた女性は、かつて刑事が唯一愛した女性だった。
出張で、空港で飛行機の中で読もうと思い、
荷物にならないよう図書館から借りてきた文庫本です。
東野圭吾さんの作品は、デビュー作から読んでいます。
正直言うと、デビューから数年の作品はあまり好きではありません。
しばらく遠ざかっていたのですが、
今期ドラマ化された『白夜行』が刊行されてからは、
殆どを読んでいます。
転機となったのは、この作品ではないかと思います。
推理小説というジャンルにこだわらず、
心理的な描写に力が入るようになった。
言い換えれば、犯罪のトリックよりも、
罪を犯すその心理や、追い詰める側の心理の描写が細やかで、
まさにストーリーテラーと言う言葉が的確だと思います。
金銭的に恵まれ将来を約束されて居た優秀な少年。
だが周囲に心を開くことはなかった。
金銭的には恵まれなかった少年。
明るい彼の周囲にはいつも友人が居た。
優秀だがどうしても、1番になることは出来なかった。
お互い、自分ににないものを持つ相手を意識しあい、
長い年月の間忘れることはなかったものの、
大切なものを失い、または背負いながらここまで生きてきた。
それが殺人事件と一人の女性を通じてまた出会う。
そして殺人事件の犯人と、二人の関係。
「宿命」とは、自分の力ではどうしようもない
大きなものを指すのでしょう。
読み終わったあと、私は後味が悪かったです。
最後には結局全てを手に入れた者と、
“全敗”と内心思う、欲しいものは何も手に入れられなかった者。
私自身が運の悪いほうなので、
後者に無意識のうちに肩入れしていたみたい^^;
何しろ、資格試験の勉強をしていれば、
当初1点不足で落ち、次回は必ず合格できると思っていたら、
試験体制自体が大幅に変更。
試験を受けるどころか再勉強。
試験当日は怪我をする。
最近ではそんな感じですが、もっともっとあるんですよ、
不運バナシ(泣笑)。
東野さんの最近の作品と比べると、展開や文体がやはり違います。
デビューからずっと代わらない作家も居るけれど、
こうやって進化し続ける凄さ。
東野さんファンならば、読んでみて欲しい1冊です。
ラストの1行が書きたくて、この作品が出来たそうです。
くれぐれもラストを先に読まないよう、ご注意くださいね。
(ISBN:4061854445 文庫 東野 圭吾 講談社 1993/07 ¥650)
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