子供の頃偶然に出会った2人の少年。
小学校から高校まで同級生だったが、お互いがお互いを意識しあいながら、どうしても親しくなれなかった。
成長し、刑事と殺人事件の容疑者として、
目に見えない糸に手繰り寄せられるかのように2人は再会する。
そして容疑者の妻となっていた女性は、かつて刑事が唯一愛した女性だった。

出張で、空港で飛行機の中で読もうと思い、
荷物にならないよう図書館から借りてきた文庫本です。

東野圭吾さんの作品は、デビュー作から読んでいます。
正直言うと、デビューから数年の作品はあまり好きではありません。
しばらく遠ざかっていたのですが、
今期ドラマ化された『白夜行』が刊行されてからは、
殆どを読んでいます。

転機となったのは、この作品ではないかと思います。

推理小説というジャンルにこだわらず、
心理的な描写に力が入るようになった。
言い換えれば、犯罪のトリックよりも、
罪を犯すその心理や、追い詰める側の心理の描写が細やかで、
まさにストーリーテラーと言う言葉が的確だと思います。

金銭的に恵まれ将来を約束されて居た優秀な少年。
だが周囲に心を開くことはなかった。

金銭的には恵まれなかった少年。
明るい彼の周囲にはいつも友人が居た。
優秀だがどうしても、1番になることは出来なかった。

お互い、自分ににないものを持つ相手を意識しあい、
長い年月の間忘れることはなかったものの、
大切なものを失い、または背負いながらここまで生きてきた。
それが殺人事件と一人の女性を通じてまた出会う。

そして殺人事件の犯人と、二人の関係。

「宿命」とは、自分の力ではどうしようもない
大きなものを指すのでしょう。

読み終わったあと、私は後味が悪かったです。

最後には結局全てを手に入れた者と、
“全敗”と内心思う、欲しいものは何も手に入れられなかった者。
私自身が運の悪いほうなので、
後者に無意識のうちに肩入れしていたみたい^^;

何しろ、資格試験の勉強をしていれば、
当初1点不足で落ち、次回は必ず合格できると思っていたら、
試験体制自体が大幅に変更。
試験を受けるどころか再勉強。

試験当日は怪我をする。

最近ではそんな感じですが、もっともっとあるんですよ、
不運バナシ(泣笑)。

東野さんの最近の作品と比べると、展開や文体がやはり違います。
デビューからずっと代わらない作家も居るけれど、
こうやって進化し続ける凄さ。
東野さんファンならば、読んでみて欲しい1冊です。

ラストの1行が書きたくて、この作品が出来たそうです。
くれぐれもラストを先に読まないよう、ご注意くださいね。

(ISBN:4061854445 文庫 東野 圭吾 講談社 1993/07 ¥650)

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