仕事をしていた午後4時頃、電話がありました。

私の勤める会社の非常勤役員でした。
内容は、その非常勤役員が現在必要な本を事務所に置いてあるから、
別の用事を済ませてからなので、恐らく6時くらいになると思うけれど、
会社まで取りに行くというもの。

わかりました、とは言ったものの、正直なところすごく困りました。
というのもその役員さん、時間通りに来たことがないし、
ヒドイ時にはその用事自体を忘れちゃったりするんです。
連絡取ろうにも携帯持っていないので、自宅にいない場合、
待っている身にはとても辛い。

なので、その役員宅が私の自宅の近くなので、帰り際届けると再度連絡しました。
その本というのが定価23,000円の専門書というだけあって、相当分厚い。
持って行くのも確かに一苦労ですが、
いつ来るのか判らない相手を待つよりも、ずっと気分も楽だし。

その後も電話のやり取りがあって、
“私が帰り際にその役員宅に寄って、それからその役員の車で会社まで戻る”だとか、
気を遣って下さっているのでしょうが、ちょっと面倒なことばかり提案されて。

結局は自宅から最寄の駅からタクシーを使ってその役員宅へ行き、
歩いて数分の私の自宅へ帰ることにしました。

タクシーで役員宅へ着き、ピンポーンと押すと、
インターフォン越しに「今行く」と聞こえたのに、5分くらい待つ。
その役員さん、なぜ非常勤なのかといえば、去年脳出血のため手術・入院。
その後歩くのが大変になってしまったからです。
なので玄関まで来るのにも時間が掛かっているんだろうな〜と思っていたら。

玄関のドアが開いて出てきたその役員さん、どういう訳か外出着姿。
???と思っていたら、「さあ行くか」。?(。゜)(゜。)? ハテ?

わざわざ重い本を届けてくれたお礼に、夕飯をご馳走するというのです。

う〜ん…。食事中、一体何を話せばいいというの〜?

いえいえ、お気を遣わないで下さいと逃げたものの、本人すっかりその気。
車の準備もOK! たはは…。

その役員さん、奥さんはお亡くなりになっているし、子供さんも独立して遠くへ。
いつも一人でご飯食べているんです。なので誰かと一緒に食べたいみたい。
そうそう嫌がるもの失礼だし。ここは(∩_∩;)P 白旗〜!
車に乗り込みました。

何食べたい? 寿司は大丈夫か? との問に、
何でも大丈夫です、と答えると、

「じゃあ、回転寿司にしようか〜(⌒_⌒)」

………(^ー^;

どこぞの豪華な老舗お寿司屋じゃないのね…。

その回転寿司、美味しいから良いんですけれど。

でも、混んでいませんか(その時19時)?と聞くと、

「昨日も午後5時半くらいに行ったけど、空いてたよ」
とのこと。

昨日も行っていましたか。そんなにそこの回転寿司がお好きなんですね^^;
ならば反対する理由もなく、その回転寿司へ。

ところがやっぱり混んでる混んでる。聞けば順番まで40分は掛かりそう。
なので今度はそのお店の近くの焼肉屋さんに。そこもやっぱり混んでる混んでる。
でも、あちこち回るよりはとそこで待つことに。

回転寿司よりもお客さんの年齢層が高いせいか、
足の不自由な役員に席を譲って頂いたり。
私のことはどうやら付き添いの実の娘と周囲の方は思ったようで、
私にも席を譲って頂いて(さすがに遠慮しましたが)。

そこでも30分くらい待ちましたが、ようやく順番が。そして早速注文。

石焼ビビンバが好きなその役員、肉よりも早くビビンバを注文する。
ちょっと早すぎないかしら? ビールを頼んでちなみに肉は牛ロース一辺倒。
それからメニューをちらと見て、

「和牛ヒレステーキなんて食べたいんだよね〜」と一言。

私も食べたいですよ、それはもちろん! なので「注文しましょうか?」と聞くと、

「今日はいいや」

………ミ(ノ;_ _)ノ=3

盛り上げておいて落とすのが上手いですよ、ホント(泣)。

その後は世間話で約2時間。
夕飯を奢って頂いて、タクシー代にしては随分な交通費まで頂いて。

帰りもその役員さんの車で帰るのですが、未だ雪の残る駐車場までの道、
来るお客さん、帰るお客さんも心配そうに足を少し引きずるその役員さんと、
傍でゆっくり歩きながら付き添う私を見ている。(゜o゜; ドキドキ...。
そしてようやく車まで。

で。
健康そうな女性が後部座席、足を引きずる高齢の男性が運転席。
それまで見守っていた人たちが一応に、「???\(◎o◎)/!」驚いておりました。

その後はゆっくり運転で自宅まで。

ちょっとケチで知られているその役員さん。
本を持って行っただけですから。このお礼は十分なものでした。

今度は私もあの焼肉屋さんで、牛ヒレステーキ、食べるぞ〜!
実はちょっとだけ未練なのでした。

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